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こんにちは。以前以前ブログで簡単にご紹介した30年ぶりに登場する抗肥満薬ウゴービ®(セマグルチド(遺伝子組み換え))について記載させて頂きます。(追記:発売日は2024年2月22日になったとのことです)
日本では今まで保険適応での抗肥満薬はマジンドール®(サノレックス)という治療薬のみでした。30年ぶりに抗肥満薬として保険適応となるウゴービ®はどのような薬でしょうか?
【ウゴービ®とはどんな薬なのか?】
まず、ウゴービ®はGLP-1受動態作動薬という、糖尿病患者様に使用するタイプの薬になります。GLP-1受動態作動薬というのはどのようなものかというのをまずは説明します。GLP-1は体内にあるホルモンで、食事を取ったときに血糖値上昇を抑えるインスリンという膵臓由来のホルモンの分泌を助ける作用があります。それにより血糖値を下げるのですが、それ以外にも胃の消化運動を抑える作用もあるため、消化管の動きがゆっくりになり満腹感を得やすい→食欲を抑える→体重減量につながるということで肥満がある2型糖尿病患者様に現在多く処方される薬となっています。ウゴービと同じ成分であるリベルサス®やオゼンピック®などが糖尿病治療薬として承認されており、当院でも多数処方されています。
【GLP-1受動態作動薬の問題点について】
一方で問題となっているのは、このGLP-1受動態作動薬がダイエット目的で処方されていることです。自費診療で多く使用されてしまっていることもあり、現在全国的にGLP-1受動態作動薬が不足しており、2型糖尿病の治療薬として必要な患者様に十分処方できていない現状がございます。ウゴービ®は抗肥満薬としての適応であるため、保険診療として糖尿病治療目的で処方することはありませんが、少なからず影響が出てくる可能性があります。
【ウゴービ®はどれくらい効果があるのか】
2023年3月27日にGLP-1受容体作動薬の「ウゴービ®皮下注(セマグルチド)」が肥満症の適応として保険診療で認可され、2023年11月22日から保険診療の適応になることが厚労省において承認されました。臨床試験では、ウゴービを使用した群では平均で体重が13.2%減少したことが示されています。具体的には、体重100kgの人がウゴービ2.4mgの皮下注射を週に1回68週間継続することで平均で13.2kgの減量が得られることが示されました。体重減少効果が期待されるウゴービ®ですが、誰でも使用できるものではありません。保険診療として、下記に当てはまる方が適応となります。
高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。
● BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する(下記参照)
● BMIが35kg/m2以上
ウゴービ®は0.25mg、0.5mg、1.0mg、1.7mg、2.4mgは5規格の用量があり、導入は0.25mgから開始をします。週1回の在宅自己注射の薬剤であり、患者様の状態を見ながら4週ごとに増量し、問題なければ2.4mg/週投与となります。薬価はそれぞれ、1876円、3201円、5912円、7903円、1万740円と設定されており、これらに対する1~3割負担が自己負担額となります
【副作用はどのようなものがあるか?】
主なものは胃腸障害です。胃の消化運動をゆっくりにする作用があることから、嘔気や嘔吐、腹痛、下痢症状など消化器症状がメインとなります。まれではございますが、急性膵炎、胆石症、脱毛症などの報告もあります。
【注意点として】
この薬剤は薬剤は処方制限が設けられています。非常に厳しい基準ですので、現時点では当院含め通常の診療所・クリニックでは処方することができないと考えられます。厚生労働省が示した投与基準は下記の通り非常に厳しいものとなっております。『教育研修施設』基準を満たす診療所・クリニックというのは、通常ほぼありませんので、処方できる病院は現状かなり大きめの大学病院・総合病院に限られると思われます。処方ご希望の方は、当院で下記基準を満たすか判断したうえで大学病院や大きめの総合病院への紹介状をお渡しする形になると思いますが、処方に適応するかどうかは最終的には処方医師に委ねられますので、紹介状を受け取ったからと言って必ずしも処方されるかどうかは分かりませんので、その点にご注意ください。
【施設基準】
施設について
・内科、循環器内科、内分泌内科、代謝内科又は糖尿病内科を標榜している保険医療機関であること。
・施設内に、以下の<医師要件>に掲げる各学会専門医いずれかを有する常勤医師が 1 人以上所属し
ており、本剤による治療に携われる体制が整っていること。また、以下の<医師要件>に掲げる各
学会専門医のうち、自施設に所属していない専門医がいる場合は、当該専門医が所属する施設と適
切に連携がとれる体制を有していること。
・以下の<医師要件>に掲げる各学会のいずれかにより教育研修施設として認定された施設である
こと。
・常勤の管理栄養士による適切な栄養指導を行うことができる施設であること。実施した栄養指導に
ついては診療録等に記録をとること。
【医師要件】
医師免許取得後2年の初期研修を修了した後に、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病並びに
肥満症の診療に5年以上の臨床経験を有していること。
又は
医師免許取得後、満7年以上の臨床経験を有し、そのうち5年以上は高血圧、脂質異常又は
2型糖尿病並びに肥満症の臨床研修を行っていること。
高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病を有する肥満症の診療に関連する以下のいずれかの学会
の専門医を有していること。
・日本循環器学会
・日本糖尿病学会
・日本内分泌学会
なお、日本肥満学会の専門医を有していることが望ましい。
【対象患者】
投与の要否の判断にあたっては、以下のすべてを満たす肥満症患者であることを確認する。
1 最新の診療ガイドラインの診断基準に基づき、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれか1
つ以上の診断がなされ、かつ以下を満たす患者であること。
・ BMI が 27kg/m
2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害(注 1)を有する。
・ BMI が 35kg/m
2以上
(注1)肥満症に関する健康障害(4382 試験の組入れ基準とされた健康障害)
(1)耐糖能障害(2 型糖尿病・耐糖能異常など)(2)脂質異常症(3)高血圧
(4)高尿酸血症・痛風(5)冠動脈疾患(6)脳梗塞(7)非アルコール性脂肪性肝疾患
(8)月経異常・不妊(9)閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
(10)運動器疾患(11)肥満関連腎臓病
2 高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病並びに肥満症に関する最新の診療ガイドラインを参考に、適
切な食事療法・運動療法に係る治療計画を作成し、本剤を投与する施設において当該計画に基づく
治療を6ヵ月以上実施しても、十分な効果が得られない患者であること。また、食事療法について、
この間に2ヵ月に1回以上の頻度で管理栄養士による栄養指導を受けた患者であること。なお、食
事療法・運動療法関しては、患者自身による記録を確認する等により必要な対応が実施できている
ことを確認し、必要な内容を管理記録等に記録すること。
3 本剤を投与する施設において合併している高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病に対して薬物療法
を含む適切な治療が行われている患者であること。本剤で治療を始める前に高血圧、脂質異常症又
は2型糖尿病のいずれか1つ以上に対して適切に薬物療法が行われている患者であること。
【投与継続の判断】
・ 高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病並びに肥満症に関する最新の診療ガイドライン等を参考に、
本剤投与中も適切な食事療法・運動療法を継続するとともに、2ヵ月に1回以上の頻度で管理栄養
士による栄養指導を受けたことが管理記録等で確認できること。
・ 日本人を対象とした臨床試験において、本剤の 68 週間を超える使用経験はないことから、本剤
の投与は最大 68 週間とすること。
・ 本剤の投与開始にあたっては、本剤による治療計画を作成すること。作成にあたっては、本剤投
与中も適切な食事療法・運動療法の継続が必要であること、及び 68 週間後までに本剤を中止でき
るよう適切な指導が必要であることに留意すること。
・ 本剤投与開始後、毎月、体重、血糖、血圧、脂質等を確認し、本剤を3~4ヵ月間投与しても改
善傾向が認められない場合には、本剤の投与を中止すること。
・ 本剤を3~4ヵ月間投与して減量効果が認められた場合、その後も2~3ヵ月に1回以上、体重、
血糖、血圧、脂質等を確認して患者の状態を十分に観察し、効果が不十分となった場合には本剤の
投与中止を検討すること。
・ 十分な減量効果が認められた場合(臨床試験では5%以上の体重減少を達成した被験者の割合が
主要評価項目の1つとされた)には、投与継続の必要性を慎重に判断し、投与開始から 68 週を待
たずに本剤の中止と食事療法・運動療法のみによる管理を考慮すること。本剤中止後に肥満症の悪
化が認められた場合は、本剤の初回投与開始時と同様に、本剤を投与する施設において適切な治療
計画に基づく食事療法・運動療法(2ヵ月に1回以上の管理栄養士による栄養指導を含む)が実施
できているかを確認し、当該計画に基づく治療を原則として6ヵ月以上実施しても必要な場合に
限って本剤を投与すること。なお、本剤中止後に一定期間患者の状態を確認し、肥満に関連する健
康障害の増悪が認められ、やむを得ず6ヵ月を待たずに投与再開を検討する場合には、その必要性
について十分に検討し治療計画を作成したうえで本剤の投与を再開すること。
非常によい薬ですが、上記のように現状ダイエット目的での自費診療でのGLP1受動態作動薬の処方が、本来適応であるはずの2型糖尿病患者様への薬剤不足に繋がったり、不適切な使用による健康被害が報告されておりますので、ウゴービ®含め、GLP-1受動態作動薬の使用はしっかり医師に相談した上で適応の判断を仰ぐことを強くお勧め致します。
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板橋区徳丸4丁目にあるゆう徳丸内科皮膚科へは、有楽町線・副都心線『地下鉄赤塚駅』、東武東上線『下赤塚駅』『東武練馬駅』から徒歩圏内です。国際興業バス(下赤03)、りんりんGO(板橋区コミュニティバス)「赤塚第一中学校」バス停目の前であり、駐車場・駐輪場完備、敷地内に薬局完備しており、受診しやすい環境を整えています。練馬区北町にも隣接しており、徒歩圏内です。待合室は広く確保されており、予約システムを導入していることで待ち時間の短縮に努め、新型コロナウイルス感染症を始めとした感染症対策を万全に行っております。当院は肥満治療も積極的に行っておりますので、肥満治療をご希望の方はぜひご相談ください。