SMOKING CESSATION OUTPARIENT CLINIC
2021年6月、ファイザー社治療薬『バレニクリン(商品名:チャンピックス®)』において他国で弊社社内基準値を超えるN-ニトロソバレニクリンが検出されたことを受け、全世界で本製品の出荷を停止となっておりましたが、2025年10月30日をもって出荷再開となりましたので、処方可能となりました。順次、流通が戻ることが予想されるため、当院でのチャンピックス®による治療を再開いたします。
近年、健康意識の増加やたばこ自体への値上げもあり、喫煙率は減少傾向にあります。禁煙を考える動機は人それぞれですが、禁煙外来を希望され受診される患者様も非常に多くなっています。ここでは、禁煙外来について説明させていただきます。
なんとなくタバコは身体に悪そう、肺がんの原因になる、などのイメージは持っている方は多いと思います。もちろん正解ですが、具体的にどのように悪いのかというと、タバコにはニコチンを始めとした発がん性物質など多くの有害物質が含まれており、喫煙者だけではなくその場にいて煙を吸ってしまう受動喫煙、さらには喫煙者の洋服などに付いたタバコの匂いから有害物質が出る三次喫煙と、周囲にまで悪影響を及ぼす、ということです。
タバコはヘロインやコカイン、アルコールと同等かそれ以上の依存性がある非常に危険な依存性物質と言われています。日本人では喫煙で男性は8年、女性は10年寿命が短縮すると言われており、それだけで非常に体への負担が大きいことがわかると思います。
肺がんはもちろんのこと、口腔内、咽頭、喉頭、食道、胃、大腸、卵巣、腎臓、膀胱など非常に多くの部位の発がんに関与しています。それ以外には肺気腫、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞やくも膜下出血、高血圧、不整脈、糖尿病、クローン病や肝硬変などの消化器疾患、腎不全やアレルギー疾患、不妊や子宮頸がんと言った産婦人科疾患、さらには認知症や統合失調症などの精神科疾患、皮膚科、耳鼻科、歯科疾患まで非常に多くの領域の増悪因子として報告されています。これらは受動喫煙や三次喫煙でもほぼ同様の報告が多数挙げられています。

これは喫煙者の方からよく言われる言葉です。喫煙者が禁煙するには多くの努力が必要ですが、イライラする、というのはすでに立派な依存症である証拠です。吸うことで離脱症状を緩和しているのみであり、ニコチンを摂取することで交感神経が活性化して結果的にストレス増加につながります。
アイコス®を代表として、加熱式タバコが普及しています。加熱式タバコは確かに紙巻タバコと比較すると有害物質量は少ないと言われていますが、少ないからと言って病気になるリスクは比例して少なくなるわけではありません。また、加熱式タバコに変更しても結果的に喫煙本数が増える傾向にあることも注意しなければならない点です。
禁煙は、人によっては薬に頼らずやめることも可能ですし、それができない場合は禁煙外来の手助けを借りるというのも一つの手だと思います。
しかし、何よりまず大事なのは自分の意思で禁煙を決断することです。それがあって初めて我々がお手伝いをできることになります。カウンセリングによる動機付けから始まり、薬を用いて離脱症状をできる限り抑える、そして少なからず出てしまうタバコへの渇望(=離脱症状)を患者様の意思でしっかり抑えること、この3つが揃って初めて禁煙に成功します。

下記の条件を満たすと保険適応になります。
①ニコチン依存症に関するスクリーニングテストでニコチン依存症と診断されている
②35歳以上の場合はブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数が200以上。35歳未満の場合はニコチン依存症と診断されたら保険診療可能)
③直ちに禁煙することを希望し、標準手順書に則った治療プログラムの説明を受け、文書で同意している方
禁煙補助薬は保険適応で医師の処方で使用できる薬剤と、薬局で自由に購入できる一般用医薬品に分けることができます。具体的には医師処方が必要なバレニクリン、薬局で購入するニコチンガム、どちらでも使用できるニコチンパッチがあります。それぞれ使用すると禁煙成功率が約2.3倍、1.4倍、1.7倍になると言われています。
当院は保険診療で禁煙補助薬を使用できるクリニックですのでいつでもご相談ください。下記のように5回通院が必要ですが、しっかり通院をしたほうが禁煙成功率が高いことが明らかになっています。

禁煙は、ご自身はもちろん周囲の人の健康増進に役立つため、非常に大切なものになります。禁煙外来は処方薬であってもあくまできっかけでしかありません。『禁煙したい!』という意志が何より重要になります。当院では、医師・看護師などスタッフ一丸となって患者様の禁煙治療をサポートしますので、力を合わせて禁煙治療に取り組んでいきましょう!