SMOKING CESSATION OUTPARIENT CLINIC
現在、禁煙外来はファイザー社治療薬『バレニクリン(商品名:チャンピックス)』が出荷停止となっております。ニコチンパッチ(商品名:ニコチネル TTS)による治療のみ行っておりますが、治療効果含め差がありますので、ご受診いただければどちらの治療の説明もさせて頂きます。ファイザー社によれば、バレニクリンの供給再開は2022年後半の見込みとのことでしたが、2024年2月現在供給は再開されておりません。患者様には大変ご迷惑をおかけいたしますが、今しばらくお待ちください。供給が再開された際には当院ホームページのブログにて記載いたします。
近年、健康意識の増加やたばこ自体への値上げもあり、喫煙率は減少傾向にあります。禁煙を考える動機は人それぞれですが、禁煙外来を希望され受診される患者様も非常に多くなっています。ここでは、禁煙外来について説明させていただきます。
なんとなくタバコは身体に悪そう、肺がんの原因になる、などのイメージは持っている方は多いと思います。もちろん正解ですが、具体的にどのように悪いのかというと、タバコにはニコチンを始めとした発がん性物質など多くの有害物質が含まれており、喫煙者だけではなくその場にいて煙を吸ってしまう受動喫煙、さらには喫煙者の洋服などに付いたタバコの匂いから有害物質が出る三次喫煙と、周囲にまで悪影響を及ぼす、ということです。
タバコはヘロインやコカイン、アルコールと同等かそれ以上の依存性がある非常に危険な依存性物質と言われています。日本人では喫煙で男性は8年、女性は10年寿命が短縮すると言われており、それだけで非常に体への負担が大きいことがわかると思います。
肺がんはもちろんのこと、口腔内、咽頭、喉頭、食道、胃、大腸、卵巣、腎臓、膀胱など非常に多くの部位の発がんに関与しています。それ以外には肺気腫、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞やくも膜下出血、高血圧、不整脈、糖尿病、クローン病や肝硬変などの消化器疾患、腎不全やアレルギー疾患、不妊や子宮頸がんと言った産婦人科疾患、さらには認知症や統合失調症などの精神科疾患、皮膚科、耳鼻科、歯科疾患まで非常に多くの領域の増悪因子として報告されています。これらは受動喫煙や三次喫煙でもほぼ同様の報告が多数挙げられています。
これは喫煙者の方からよく言われる言葉です。喫煙者が禁煙するには多くの努力が必要ですが、イライラする、というのはすでに立派な依存症である証拠です。吸うことで離脱症状を緩和しているのみであり、ニコチンを摂取することで交感神経が活性化して結果的にストレス増加につながります。
アイコス®を代表として、加熱式タバコが普及しています。加熱式タバコは確かに紙巻タバコと比較すると有害物質量は少ないと言われていますが、少ないからと言って病気になるリスクは比例して少なくなるわけではありません。また、加熱式タバコに変更しても結果的に喫煙本数が増える傾向にあることも注意しなければならない点です。
禁煙は、人によっては薬に頼らずやめることも可能ですし、それができない場合は禁煙外来の手助けを借りるというのも一つの手だと思います。
しかし、何よりまず大事なのは自分の意思で禁煙を決断することです。それがあって初めて我々がお手伝いをできることになります。カウンセリングによる動機付けから始まり、薬を用いて離脱症状をできる限り抑える、そして少なからず出てしまうタバコへの渇望(=離脱症状)を患者様の意思でしっかり抑えること、この3つが揃って初めて禁煙に成功します。
下記の条件を満たすと保険適応になります。
①ニコチン依存症に関するスクリーニングテストでニコチン依存症と診断されている
②35歳以上の場合はブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数が200以上。35歳未満の場合はニコチン依存症と診断されたら保険診療可能)
③直ちに禁煙することを希望し、標準手順書に則った治療プログラムの説明を受け、文書で同意している方
禁煙補助薬は保険適応で医師の処方で使用できる薬剤と、薬局で自由に購入できる一般用医薬品に分けることができます。具体的には医師処方が必要なバレニクリン、薬局で購入するニコチンガム、どちらでも使用できるニコチンパッチがあります。それぞれ使用すると禁煙成功率が約2.3倍、1.4倍、1.7倍になると言われています。
当院は保険診療で禁煙補助薬を使用できるクリニックですのでいつでもご相談ください。下記のように5回通院が必要ですが、しっかり通院をしたほうが禁煙成功率が高いことが明らかになっています。
喫煙は心臓・肺・がんなどの病気になる可能性を大いに高めると言われており、日本では年間12-13万人の死亡に関連しているため、禁煙治療の重要性は高まってきています。
多くの喫煙者は『ニコチン依存症』という薬物依存の状態であり、さらに、ニコチンの依存性はコカインやヘロインといった薬剤と同程度とも言われているため、非常に依存度が高い危険な物質ということができると思います。
禁煙治療にはこれまで医師が処方する医薬品として飲み薬や貼り薬がありましたが、最新の治療法としてニコチン依存症治療アプリのCureApp SCニコチン依存症治療アプリ及びCOチェッカーが追加されました。なんと医師によって薬と同じように『処方』され、治療に役立つという、非常に画期的な治療法になります。
基本的には、従来の禁煙外来と同様であり、処方薬に加えて、治療アプリを併用することとなります。一般的にスマートフォンで利用されているヘルスケアアプリとは異なり、禁煙外来で医師の診断のもと処方され、患者さんにご使用いただく医療機器です。常に患者さんのそばにあるスマートフォンの特性を生かし、自宅にいるときや勤務中など医療者の介入が難しい『治療空白』期間をアプリが支援することで、禁煙継続率が向上します。また、アプリへの入力内容から前回の診察以降の患者さんの日常の様子を医師が詳細に把握することができるため、より効率的で質の高い禁煙治療を可能にします。
禁煙外来の難しさは、『いかにしっかり通院していただくか』『いかに病院以外の場所で治療を行っていくか』が肝要でした。
『吸いたくなってしまった・・・。なにか対策はあるのかな?』
『吸ってしまった・・・。これから治療はどうすればいいんだろう』
『そもそもたばこを吸うのって具体的にどういう害があるんだろう?』
このようなことは、外来でも必ず説明していますが、そもそも患者さんの疑問は突然わいてくるものであり、外来中にすべて説明できているわけではありません。特に対処法などは個人差もあるため、いろいろなアドバイスをくれる『CureApp SC』は非常に大きな役割を担うと考えられます。
行動変容、という言葉を聞いたことがあるかもしれません。タバコなどの嗜好品に対する治療は薬を出すだけですべてが改善することはあまり期待できず、患者さんの禁煙したい気持ち、意欲、行動など、多くのものを変えていかねばなりません。『禁煙に関心がない→関心がある→準備をしている→実行している→長期的に実行している』というように、禁煙に対する気持ちの変化を通常の外来だけで行うことは困難でした。しかし、アプリが自宅でも治療を手伝うことで、行動変容につながることが予想されます。
アプリなんかで治療に役に立つのか、という意見もあるかもしれませんが、そもそも保険適応になるためには多くの臨床試験が行われ、効果が高いと判断されるものでなければ保険収載されません。『CureApp SC』の治療効果を示す代表的な論文を一つご紹介しておきます(Masaki K, et al. npj Digital Medicine.2020 March 12;3(1):1-7)。
医師の診察を受けた際に処方され、その後、利用開始するために患者さん自身のスマートフォンに患者アプリをインストールし、医療機関で初期設定を行います。後日、COチェッカーがご指定のお届け先住所へ届きますので、同封されている取扱説明書に従い、利用を開始します。ただし、適応外になる患者様もいらっしゃいますので、詳しくは担当医までお尋ねください。
治療アプリ®は保険適応のため、治療費用はご自身の負担割合に応じてご負担いただきます。CureApp SCを含めた禁煙治療は診察などを含めて3割負担の場合、20,000~27,000円(CureApp SCを用いない場合は、13,000~20,000円前後となります)ほどとなります。タバコを1日1箱500円で喫煙を続ける場合にかかる費用は年間182,500円ほどになり、更に毎年継続的に費用がかかることを考えると経済的なメリットは非常に大きいと言えます。
CureApp SCを用いる場合は7,000円ほど高くなりますが、半年間使えるアプリのため、月1,000円強で禁煙治療の手助けをしてもらえることになります。これを高いととらえるか、安いととらえるかは個人差があると思いますが、当院では患者様のニーズに合わせて、処方を行っていきます(希望がない方、適応がない方には必ずしも処方するものではありません。詳しくは担当医までお尋ねください)。
禁煙は、ご自身はもちろん周囲の人の健康増進に役立つため、非常に大切なものになります。禁煙外来は処方薬でもアプリであってもあくまできっかけでしかありません。『禁煙したい!』という意志が何より重要になります。当院では、医師・看護師などスタッフ一丸となって患者様の禁煙治療をサポートしますので、力を合わせて禁煙治療に取り組んでいきましょう!