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こんにちは、皮膚科担当の吉田です。
今回はアトピー性皮膚炎の注射薬である「デュピクセント®」をご紹介したいと思います。
デュピクセント®は、アトピー性皮膚炎の原因の一つと考えられている「IL-4」と「IL-13」という物質の働きを直接抑えることで皮膚の炎症反応を抑制する、生物学的製剤といわれる注射のお薬です。
ステロイド外用剤・プロトピック軟膏などの抗炎症外用剤を一定期間投与しても十分な効果が得られない、中等症以上の生後6カ月以上、かつ体重5kg以上のアトピー性皮膚炎の方にお使いいただけます。
※デュピクセントを投与開始後も、必ず外用剤は併用して頂きます。外用剤なしでデュピクセントのみで改善したという報告はありません。
⇒デュピクセントを使用される患者さんへ。(https://www.support-allergy.com/atopy/)
長い期間アトピー性皮膚炎は治療の選択肢が少なく、症状の重い方はなかなか改善せずお困りの方も多いと思います。
「今までの治療をしても、痒みがとれず夜ぐっすり眠れない。」
「夜眠れないため日中に眠くなり、学業や仕事に影響がでている。」
「皮膚の症状が強く、人前にでるのがつらい。」
など、日常生活に支障がでてしまっている方が多く、本当に苦しまれてる方が多い事を痛感します。
この治療は既存の治療法と比較するとかなりの効果を発揮する治療薬です。
2. 投与方法
初回投与日のみ、2本を皮下注射します。その後は2週間に1回、1本を皮下注射します。
注射部位は、二の腕、腹部、ふとももです。
自己注射をご希望の場合は来院日なども異なってくるため、ご説明いたします。
適応の場合は次回来院の予約をお取りし、次回から投与を開始します。
※冷蔵した薬剤を45分以上かけて常温に戻す必要があり、当日注射はできないため必ず予約が必要です。
3. 薬剤費の目安
高い効果が期待できる治療ですが、患者さんの治療費の負担が大きいという問題点があります。患者さんの経済的な負担を軽減するため、いろいろな医療費の助成制度があります。(※助成額は加入されている公的医療保険や収入などにより異なります。開始前に必ずご自身にて、ご加入されている公的医療保険に助成額について確認をして頂きます。)
4. 自己注射について
平成31年6月から自己注射ができるようになりました。
院内では注射せず、処方箋をお渡しご自宅で2週間毎に自己注射をして頂きます。
自己注射をするためには、院内で2回の指導を受けて頂く必要があります。
その際には下記の指導料を負担して頂きます。(導入初期加算は自己注射開始後3ヶ月に限り算定)
自己注射のメリットは、
などがあります。
デメリットは、自分で注射をしなくてはいけないということです。
自己注射をご希望されない場合は、従来通り院内で注射も可能です。
5. 副作用について
他の生物学的製剤と比較すると副作用はかなり少ない薬剤ですが、下記の副作用は報告があります。
・過敏症反応:息苦しさ、心拍数の上昇、めまい、嘔気、嘔吐、皮膚のかゆみや赤み、関節痛、発熱など
・注射部位反応:注射した部位に、赤みや腫れ、かゆみがみられる場合があります。
・ヘルペス感染:口周りや唇に発疹などがみられる場合があります。
・結膜炎:目やまぶたの炎症症状(赤み、腫れ、かゆみ、乾燥など)がみられる場合があります。症状は強い場合は眼科も受診していただきます。
6. 投与に注意が必要な方
・気管支喘息の方
デュピクセントは喘息にも効果がある薬剤です。
デュピクセントを投与中に従来の喘息の治療を中止すると喘息が悪化することもあるため、喘息の治療はデュピクセント使用中も必ず継続していただきます。
・寄生虫感染症患者
・妊婦、産婦、授乳婦(禁忌ではありませんが、基本的には投与しておりません。)
・高齢者、小児
7. よくあるご質問
・何回くらい治療すれば、効果が実感できるか?
1回の注射でかゆみがかなり軽減される症例が多い印象です。3~4か月で発疹・かゆみともに改善がみられることが多いです。
・治療はいつまで継続するのか?
新薬ですので、デュピクセントをいつまで続けるかについて明確な指標はありません。
かゆみが改善し発疹・赤みがある程度軽快し、患者さんが効果を実感できるまでは継続します。
6ヶ月を目安として、よい状態が維持できるようならデュピクセントの投与を中止できるとされています。デュピクセントを中止後も外用剤は継続する必要があります。
外用のみで皮疹が増悪したときには、デュピクセントを再開することもできます。