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こんにちは。ここ2-3週間でだいぶ花粉症の患者さんが増えています。以前にも舌下免疫療法の記事は書いていますが、改めて書いていきます。以前の記事はこちらをご参照ください。
11月に記事をアップしたのは、『スギ花粉に対する舌下免疫療法を開始するには、スギ花粉の飛散時期を避けなければならない』からです。しかし人間というのは正直な生き物なので、自分が困っていない時期に舌下免疫療法の話をしても興味を持ちませんが、花粉症の時期になると非常にみなさん関心を持ってくれます。花粉症で当院を受診された方には、必ず舌下免疫療法の案内とパンフレットをお渡ししています。今一度まとめてみました!
Q. スギ花粉症とは?
スギ花粉が原因となって、くしゃみや鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、のどのイガイガ感などのアレルギー症状を起こすものです。日本人にどれくらい花粉症の患者さんがいらっしゃるかというと、アンケート結果では38.8%と非常に多くの患者さんがいらっしゃることがわかりました(鼻アレルギー診療ガイドライン2020年版(改訂第9版)より引用)。花粉症の症状は、鼻や目の症状が出ることで疲労感が出たり、いらいらしたり、睡眠にまで悪影響が出ることがあるため、日常生活に大きな影響を与えます。
Q. 通年性アレルギー性鼻炎とは?
ダニやカビ、昆虫、イヌやネコなどが原因となって季節を問わず、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどの症状が現れる病気になります。こちらもアンケートの結果、日本人の24.5%が通年性アレルギー性鼻炎であることがわかっています(鼻アレルギー診療ガイドライン2020年版(改訂第9版)より引用)。通年性アレルギー性鼻炎の大きな原因として考えられているダニは、温かく、湿気のある布団やじゅうたん、畳などに生息しています。
Q. どうやって診断するの?
診断は問診が基本になります。その症状がアレルギーによるものなのか、それ以外なのかが重要となります。喘息などがあるか、食物アレルギーなどあるか、季節性か、家族歴があるか、アトピーがあるか、などを詳細に問診します。その後、必要に応じて、血清抗体検査(いわわゆるアレルギーを調べる採血検査ですね)や皮膚反応テストなどを行います。
Q. アレルギー性鼻炎はどうやって治療するの?
何よりも基本は原因となるスギやダニに極力触れない、ということです。スギであればマスクや眼鏡を着用する、洗濯物はなるべく室内で乾かし、外から帰宅したら服をしっかりはらう、などですね。ダニであれば室内や寝具などを清潔に保ち、定期的に天日干しをすることが基本となります。
しかしそれだけでは改善しない場合は、薬物療法になります。薬物療法は大きく分けて、その時の症状をおさえるための『対症療法』とアレルギー自体を治療または弱めてしまう『免疫療法』にわけられます。対症療法に関しては、こちらをご参照ください。
では、ここでは免疫療法について解説していきます。
Q. アレルゲン免疫療法ってなに?
アレルギーのもととなるものを少量から投与することで、体をアレルゲンに慣らして、症状を和らげたり根本的な体質改善が期待できる治療法です。適応となる患者さんは採血などでスギやダニに対するアレルギーがあるかどうかチェックが必要になります。
アレルゲン免疫療法には『皮下免疫療法』と『舌下免疫療法』があります。皮下免疫療法は以前からあった注射による免疫療法ですが、頻回な医療機関受診が必要になることや毎回注射による痛みに苛まれるということがあったため、当院では舌下免疫療法を強く推奨しています。現在日本で舌下免疫療法の保険適用になっているのは、スギ花粉症とダニアレルゲンによる通年性アレルギー性鼻炎に対する治療になります。
Q. 舌下免疫療法とは?
まず、スギ花粉の薬は花粉症のシーズンには開始することができないことに留意する必要があります。スギが飛び始めているときにわざとスギのもとを投与すると症状が悪化する可能性があるためです。そのため、当院では1月~4月のスギ花粉に対する舌下免疫療法の開始は行っておりません。
スギ花粉症に対する薬『シダキュア®』と、ダニアレルギーに対する『ミティキュア®』は1日1回服用する薬になります。服用方法は『舌下』免疫療法というくらいなので、薬を舌の下に置き、1分間保持したあと飲み込みます。その後5分間はうがいや飲食は控えていただきます。服用の前後2時間は、激しい運動やアルコール摂取、入浴などは避けることとされています。効果を発現するメカニズムに関しては、アレルギー反応を抑制する免疫反応が起こることで症状が抑えられると考えられていますが、はっきりとしたことはわかっていません。薬は最低3年は内服していただき、それ以上続けるかどうかは症状次第と言われているため、概ね3-5年と考えていただくのがよいと思います。
効果の程度に関してはさまざまです。症状が完治してしまう人もいれば、完治はしなかったけれども薬が不要になった方、薬を減らすことができた方など、効果は個人差があります。効果が出始めるのは数か月以上たってからと言われているため、気長な治療が必要となります。
Q. どういう人が適応になるの?
明らかに鼻炎などの症状で悩んでいる方で、スギ花粉・ダニに対するアレルギーを持っているすべての患者さんが治療対象となります。当院では、以前にアレルギー採血をしていればその結果を確認、アレルギー採血をしたことがなければ当院で採血を行い、その結果を見てclass 2以上の患者さんを適応と判断しています。
特に適応を勧めたい患者さんは、若い方や将来妊娠を希望されている女性です。舌下免疫療法は5歳以上であれば適応になるため、小児の患者さんは今後ずっとアレルギー性鼻炎で悩むのであれば早めの治療をしてしまうほうがいいこと(特に花粉症真っただ中に受験シーズンになるため、早めの治療が効果的です)、小児期であれば医療費の問題もクリアできることが多いこと、妊娠や出産後の身体的にも肉体的にも負担のかかる時期に少しでも負担を減らすこと、などがあげられるため、上記の患者さんには積極的に舌下免疫療法を勧めています。
逆に適応を慎重に判断しなければならない方は、重度の気管支喘息がある方や重篤なアレルギー発作の既往がある方は注意が必要と考えています。
Q. 副作用はどのようなものがあるの?
副作用に関しては、理論上は重篤なアレルギー発作(アナフィラキシーショック)を起こす可能性があるため、最初の1錠は院内で内服していただき、その後30分経過を見ます。問題なければ翌日以降は自宅での内服が可能です。最初の1週間は少量の薬を飲んでいただき、特に副作用がなければ2週目から薬の量を増量します。その後2週間後再診していただき、問題なければ1か月ごとの受診となります。その他の副作用としては、特に最初の1週間は口の中が浮腫んだりかゆみがでたり、イガイガする感じが出る方がいらっしゃいますが、概ね自然に解消していきます。
Q. 副作用が出た場合はどうすればいいの?
口の中の違和感に関しては、ほとんどが1週間以内に改善するため、特に処置を必要としないことがほどんどです。それでも少し続く場合は、治療薬は継続しながら抗アレルギー薬を内服して改善するかを慎重に見ていきます。喘息症状などが出た場合は、いったん治療薬を中止し、喘息が改善した後に慎重に再開を検討する方針になることが一般的です。また、シダキュアよりミティキュアのほうが若干副反応が出ることが多い印象です。
Q. 薬を飲めない時期がありました。どうすればいいの?
短期間の飲み忘れや休薬であれば減量せずに再開することが可能です。しかし、数か月以上の休薬になった場合は減量が必要なこと、シダキュアの再開時期がスギ花粉の飛散時期に重なった場合は再開時期をスギ花粉の飛散時期が終わった後にずらす必要があります。
Q. アレルギー採血で、スギ花粉もダニもどちらも陽性でした。同時に治療できるの?
どちらも治療可能です。まずは、困っているほうからの治療でよいと説明しています。ただし、シダキュア®に関しては、花粉の飛散時期である1~4月に開始することはできないため、今の時期から開始するのであれば、ミティキュア®をお勧めし、ゴールデンウィーク空けくらいにシダキュア®を開始することをお勧めしています。
どちらも治療開始できる場合は、時期をずらして開始します。アレルギーの元になるものを二つ同時に投与するとアレルギーを起こす可能性が高まることが予想されるためです。2剤の治療を行う場合、基本的には当院では1か月以上空けて開始するように推奨しています。
今一度舌下免疫療法に関してまとめてみました。今は花粉の最盛期のため、非常に多くの花粉症患者さんがいらっしゃいますが、今の辛い症状を少しでも改善する見込みがある治療ですので、ご興味があればいつでも受診してください。
【ゆう徳丸内科皮膚科へのアクセス】
板橋区徳丸4丁目にあるゆう徳丸内科皮膚科へは、有楽町線・副都心線『地下鉄赤塚駅』、東武東上線『下赤塚駅』『東武練馬駅』から徒歩圏内です。国際興業バス(下赤03)、りんりんGO(板橋区コミュニティバス)「赤塚第一中学校」バス停目の前であり、駐車場・駐輪場完備、敷地内に薬局完備しており、受診しやすい環境を整えています。待合室は広く確保されており、予約システムを導入していることで待ち時間の短縮に努め、新型コロナウイルス感染症を始めとした感染症対策を万全に行っております。当院は、スギアレルギーに対する『シダキュア』、ダニアレルギーに対する『ミティキュア』を用いて舌下免疫療法を行うことのできる施設です。アレルギー採血含め、いつでも担当医にご相談ください。